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2012/05/02

トヨタ86/スバルBRZ 7

グレードによるスプリングレートの差は装備の違いによる軸荷重の相違に合わせたからだ。
86/BRZのスプリングのホイールレートはフロントはインプレッサよりやや低く、リヤは同等と考えられる。

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86/BRZのサスペンションはボンネットの高さが通常の乗用車から相当に低いため、アッパーマウントからハブブラケットまでの距離が短く、長さはインプレッサに比べ150mm程度短い。単体で眺めると極端に全長の短いストラットと言える。この状態でストロークは150mm程度は確保されているため、バンプ側ストロークは約90mmで、バンプラバーの全長が55mm程度となっている。このため、ダンパーのチューニングを行う場合は微低速域は高い精度が求められ、車高のダウン量も自由にはならない。20mmを越えてダウンさせると1Gの状態で常時バンプラバーが圧縮状態となるのだ。

東京オートサロンをはじめ各会場でデモランしている車両では45mm程度車高をダウンさせていたが、もちろんうまくセッティングされているわけではない。ストラットの全長が短いということはオイル量も少ないため、横剛性を高めるための軸径のアップではオイル量が減少するので好ましくなく、したがってより本格的にチューニングするためにはこれまでの車種とは全く異なったアプローチが必要となるだろう。

86/BRZのホイールアライメントは、前後ともトー角はゼロ、キャンバー角はフロントがゼロ、リヤが-1度20分となっている。キャンバー角は、リヤに関しては従来通りカムボルトで調整できるが、フロントに関してはブラケットボルトの上下入れ替えのみとなっており、事実上キャンバー角の調整ができない。ただし、従来からスバルで使用されている偏芯ボルトをブラケットの上側に使用すれば通常のキャンバー角の調整は可能だ。

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BRZ Interior

タイヤに関してはスバルは当初はハイパフォーマンス系のポテンザRE050 を想定していたが、最終的にトヨタの要請でエコタイヤ系が標準装備になっている。スポーツカーとしての持ち味、コーナリング、加速、ブレーキでのバランスの高さを実感できるのはやはりハイパフォーマンス系のタイヤであることは間違いない。
一方、標準装着タイヤでベストバランスしているのは205/55R16インチ装着車だろう。決してハイグリップではないが、接地性やハンドリングの手応えのバランスがよいのだ。ホイールとタイヤは18インチサイズに問題なく変更でき、その場合、リヤのタイヤ幅を235mmまで広げられる。しかしフロントのタイヤ幅は215mmが無難のようだ。

なお、86/BRZは海外の公道やニュルブルクリンクなどではテストされているが、日本的なショートサーキットでSタイヤを装着してのテストは行われていない模様で、ブレーキやハブ周りの冷却が難しい低速サーキットで、負荷の大きなSタイヤを装着したようなケースでのハブベアリングの入力と熱に関する耐久性に関しては今後の検証を要する。
ブレーキは、上級モデルがフロント16インチ・ディスク、それ以外は15インチ・ディスクだが、スバル製17インチ・ディスクへのアップグレードは容易だ。またキャリパーのアップグレードも容易だ。86に関しては、GTリミテッドのみはパッドの摩擦材にガルファ製を使用し、効きを高めている。
ステアリングは86/BRZの場合は13.0というクイックなギヤ比を与え、ラックギヤの保持はボルトによるキャノンマウントとしている。また搭載スペースの問題でジェイテクト製の電動コラムアシスト式となっているが、結果的には剛性感は高いもののややオン/オフ・スイッチ的な動きが強まっている。また360mm径のステアリングホイールの自重が重いのが欠点だ。

注目の燃費は、実用燃費で高速道路では14~15km/L 郊外道路でMT車が10.6km/L、AT車は11.9km/Lといわれる。アメリカにおけるEPA燃費(つまり公式認定燃費)は、6速MT車で市街地が9.35km/L、高速が12.75km/L、6速AT車の市街地が10.63km/L、高速は14.45km/Lとなっており、6速AT車のほうが1割以上燃費がよい。

自動車雑誌などでの86/BRZの試乗インプレッションは、発売のかなり前から掲載されているが、これらはいずれも量産試作車での話しである。今回は生産工場であるスバル・太田工場がサンバーの生産が終わった後に製造ラインを86/BRZ用に更新する必要があったため、量産試作は仮のラインで行われ、試作のばらつきが通常より大きくので、試乗記の詳細はあまり参考にはならない。また、結果的にライン量産車の方が精度が高く、仕上がりがよいと考えられる。また海外での試乗評価は、ポルシェ・ケイマン、ポルシェ911 GT3、ロータス・エキシージなどと比較され、絶対的な性能はともかく、ハンドリング性能や試乗フィーリングはこれらに引けを取らないと絶賛されている。
メイン市場である海外では、早くも「TOYOBARU」もしくは「SUBIYOTA」というニックネームで呼称されている位、注目度を集めていると言えるだろう。

<完 ■トヨタ86/スバルBRZ 1 を読む>