Column

2009/05/28

BM/BRレガシィ 4

アッパーボディの骨格は、新環状力骨構造と呼ばれ、もともとストレートな前後方向の骨格フレームとリング状のフレームを組み合わせた合理的でしかもキャビン強度の高い定評のある設計となっている。高張力鋼板は45%程度使用され、サイズは大型化されているにも関わらず軽量・高剛性である。

これ以外では、前後のバンパービームの取り付け部はクラッシャブル構造とし、軽衝突時にメインフレームがゆがむ事を防止したり、ラジエーターフレームもボルト止めとして軽衝突時の修理に溶接を必要としないなどの工夫も取り入れられている。

エンジンは今回から排気量を拡大して2.5Lメインとなり、従来の2.0Lクラスから脱却を図っている。したがって、EJ25型4気筒がメインになり、それ以外でアウトバックには3.6Lの6気筒が設定されているのみとなっている。この2.5Lはストロークは2.0Lと同じため、ボア×ストロークは99.5×79.0㎜とビッグボアのエンジンである。
通常の直列4気筒エンジンは、2次振動面が生じるため2本のバランスシャフトを装備する。しかし水平対向4気筒の場合は対向するシリンダー同士が2次振動を打ち消す為、こうしたの制約がない。バランスシャフトを装備することなく2.5L化ができ、その分だけ軽量なのである。
いまさらという感じがするが、直4に比べて水平対向4気筒エンジンの滑らかさ、特に3000から4000回転あたりの滑らかなフィーリングは特筆である。

今回のEJ25のラインアップはベースエンジンとなる16バルブ・SOHC版と、DOHCターボ版がある。また、アウトバックにのみL自然吸気6気筒のEZ36型が設定されている。これも北米向けトライベッカに採用されているエンジンを手直ししたものだ。
SOHC版は、ほぼ新設計で、樹脂インテークマニホールド、可変バルブリフト機構を備え、レギュラーガス使用で、高出力化、フラットトルクと2.0Lと同等レベルの燃費、SU-LEVを達成した。
ターボ版は、圧縮比9.5と高圧縮比で過給を行い、国産車で初めて2000~5600回転の幅で完全にフラットな最大トルク域特性を実現している。これは進角と過給圧の電子制御を緻密に行うことで実現したのだろう。パワーは285ps/6000回転だ。

ターボエンジンの大きな変更点は、エキゾーストマニホールドとターボの配置が革新されたことで、ターボは従来のエンジン右後方からエンジン全部中央に配置換えされた。このため、排気ポート→等長エキゾーストマニホールド→ターボの距離が大幅に短縮され、排気エネルギーを直4ターボエンジンに近いレベルでターボに導くことができ、しかもターボ前後の蓄熱容量を抑えることができるため触媒の早期活性化、つまりコールドスタートでの排ガス浄化性能の向上が実現する。このため2次エアポンプは廃止された。
またこのレイアウト変更により、排気ガスエネルギーが効率アップしたためにツインスクロール/チタン翼といった従来型で使用された超高価なターボではなくスタンダードな小型ターボを採用できるようになった。さらにターボの下側レイアウトにより、エンジンの重心も25㎜下がっているという。

ターボ・エンジン仕様は、デュアルAVCS、タンブルジェネレートバルブなども装備。吸排気AVCSはEGRの増大をはかるためだろう。またタンブルジェネレートバルブは、過給圧が低い時の燃焼室内の流動性を高めて燃焼速度を向上させるためだ。燃焼室の表面積が大きいので有効だと思う。
排ガスは従来のU-LEVからSU-LEVに。つまり、EZ36も含めて全エンジンがSU-LEVになっている。
EZ36は、EZ30で採用されていたポルシェと同じINA社製の可変バルブリフト・タペットを廃止したりカム駆動チェーンレイアウトを変更するなどしてトライベッカに採用されていたもので、今回のアウトバック用はレギュラーガス化もはかっている。チューニングは、やはり低中速重視になっている。
今回から点火プラグは中心電極がイリジウム針、外側電極に白金チップの突起を付けた新型プラグが採用され、低速時の着火性能が一段と高められているのも注目だ。

トランスミッションは、2.5ターボ、EZ36系は従来からの5速AT、6速MTが設定されるが、2.5LのSOHCには新開発のCVT「リニアトロニック」が組み合わされることになった。今後の燃費重視の柱となるトランスミッションとして開発されたはずで、縦置きトランスミッションとしてはアウディに次ぐが、アウディはFFモデルにのみ使用しているのに対し、スバルはAWDに適用した。もっともスバルはかつて、ジャスティで世界初の量産CVTを開発し日産マーチにCVTを供給したりと先駆者なのだが、小排気量エンジン向けに限っていたため、大排気量向けでは出遅れ感がある。
設計にあたっては、縦置きレイアウトのため、幅と高さの制約が生じるが、スバルのCVTは幅を抑えるために、入力軸をギヤで変換して上に持ち上げ、出力軸も位置を下げるという手段で解決した。また、CVTのベルトはファンドーネ式の金属ベルトではなく、ドイツLuk社製のチェーン・ベルトを採用。変速比6.3とCVTとしては最高レベルを実現している、一般的な通常のCVTは6.0未満の変速比なのだ。
このため、ギヤ比は1速相当で3.5、6速相当で0.56というワイドさで、しかも高いオーバードライブ比が実現している。MTモードでは6速に設定した。発進時の滑らかさやクリープを生かすためにトルコンを装備しているが、もちろん走り始めればほぼロックアップ状態となる。