Column

2000/05/31

チャイルドシート選びの基準は?

ところでCRSの購入に際しては、何を基準にして選んだらよいか分からないという声をよく聞く。安全性の目安としては、JISマークや運輸省型式認定マークがあるが、これはCRS本体の強度、品質に重点を置いた衝突実験で認定されたもので、欧米のように実車に装着して現実的な使用場面を想定したテストは行っていない。

現実的な使い方をした場合、どれだけ信頼できるかいささか不安が残るところだ。日本は軽自動車から大型の4WD車までクルマの種類も多く、依然として2点式シートベルトも多いので、一概にCRSの善し悪しを判断するのは難しく、実車に装着してクルマのシートとCRSがきちんとフィットしているか、あるいはシートベルトと合っているかなど確認する必要がある。

CRSの普及率が高い欧米では取り付けの際のミスユースが多いという問題が生じている。国際工業規格ISOはこの問題を解決するべく90年から議論を重ね、98年にISOFIXというミスユース予防策を打ち出した。

これはCRSをクルマにシートにアンカーを使って固定する方式であり、自動車メーカーの協力によってCRSが簡単にしかもしっかりと固定できる方式として注目されている。ISOFIXはこの規格を採用したクルマに買い換えなければ使用できないわけで、日本で効果的とは言えない。

日本では今あるクルマにどんなCRSをどのように取り付けるべきか、に注目が集まっているからだ。従って、CRS単体の機能だけでなく、販売店側にも取付方法や使用法を徹底しておく必要があるだろう。本来であれば、クルマの販売店あるいはCRSの販売店側にそうした知識を豊富にもったプロフェッショナルなアドバイザーを要請する必要があるだろう。

CRS選択に当たってのポイントをまとめると:
(1)子供の年齢を目安に体重、身長、体格にあったものを選ぶ。

(2)CRS本体の衝撃吸収性の優れているものを選ぶ(特に頭部を保護できるもの)

(3)できるだけ軽量で、取付が簡単で使い勝手もよいものを選ぶ。

(4)底面がフラットで、重心が下にあり座ったときに安定しているものを選ぶ。

(5)子供の成長に合わせて調整ができ、できるだけ長く使えるものを選ぶ。
CRSの着用義務は6歳までだが、もし6歳以上になっていたとしても、身長が140cm以下ではシートベルトは安全に作動しないのでジュニアシートを使うべきだ。自分のクルマに合ったCRSを選んだら、正しく取り付けなければ効果はない。取り付けに際し注意するポイントは

(6)新生児の後ろ向きシートは、絶対にエアバッグのついた助手席には乗せないこと。
衝突したときにエアバッグが開き、その衝撃でCRSを吹き飛ばして子供が即死した例が米国にある。やむを得ず助手席に1歳以上の子供を乗せなければならない場合は、シートをめいっぱい下げて取り付けること。

(7)シートベルトの構造(ELR式かALR式)に合った取り付け方をマスターする。
CRSを子供体格に合わせて正しい向きに取り付けたら、ベルトガイドにシートベルトを通し、確実に固定されていることを確認する。CRSの間違った取り付け方、間違った使用法は非常に多く、よく見られるものを挙げると次のようになる。

(8)前向きのCRSに早く変えすぎる。(誤使用率11%)
首のすわっていない1歳未満の幼児、10kg未満の子供は後ろ向きのCRSを使う。一人でお座りができるようになったら前向きのCRSにして、体重が18kg以上になったらジュニアシートを使う。

(9)胸当てグリップが正しい位置にセットされていない。(誤使用率19%)
胸当てグリップは子供の脇の下と同じ高さにセットし、顎から8cm以上離しておく。

(10)後ろ向きのCRSの角度が、正しくセットされていない。(誤使用率30%)
シートバックの角度が45度に保たれるようにリクライニングする。あるいはクルマのシートと密着しない場合は、台座の下にタオルなど置いて、子供の頭がシートに安定するようにセットする。

(11)肩ベルトが子供の体格に合った位置にセットされていない。(誤使用率20%)
後ろ向きで使用する場合は、ハーネス・ストラップは肩の位置か、肩より下の通し穴にセットする。前向きで使用する場合は、肩の位置か、肩より上の通し穴にセットする。

(12)CRSのハーネスをゆるく締めている。(誤使用率33%)
子供の鎖骨とハーネスの間に、指一本が入るくらいに調整する。

(13)クルマのシートベルトがロック状態になっていない。(誤使用率11%)
クルマのマニュアルで、ロックモードにする方法を確認する。

(14)CRSがクルマのシートに正しく固定されていない。(誤使用率63%)
CRSの台座をクルマが揺れるくらい強く揺らしてみて、前後左右に2.5cm以上動かないことを確認する。

このほか例外的なケースだが、欠陥商品として回収されることになっているCRSを使っていたり、故障したままのCRSを使っている場合もある。CRSがリコール商品である場合は、早めにメーカーに連絡して交換、または修理をしておきたい。

こうした例をみてもわかるように、CRSの取付にはかなりのコツと力が必要で、現状では誰でも簡単に取り付けられて、安全に使えるものとは言い難く、より簡単で確実に使える商品の開発を望みたい。
CRS着用義務化は、裏を返せばそれだけクルマに乗る子供たちの安全が脅かされてきたということもある。子供の生命を守るため、親としての当然のマナーとはいえ、CRSの購入は経済的負担も大きく、旅行時や祖父母が孫を預かった場合など、ドライブする楽しみを奪いかねない。
より一層の普及のためにも、レンタル・CRSが簡単に借りられようにしたり、取り付け講習が公的機関などで広く行われることを期待したい。