Column

2006/12/06

スプリングレートの考え方 

ローダウンスプリングや車高調整式サスペンションに交換する場合、一般的に大多数の方から質問されるのはスプリングレートです、また実際に購入する際に数値を確認される方も多いと思います。ですが、実は最も重要なことはアーム長を含めたサスペンションにおける実効レートの比較が必要だということなのです。

ローダウンスプリングや車高調整式サスペンションに交換する場合、一般的に大多数の方から質問されるのはスプリングレートです、また実際に購入する際に数値を確認される方も多いと思います。
ですが、実は最も重要なことはアーム長を含めたサスペンションにおける実効レートの比較が必要だということなのです。スバル車だけに限らず、一般的に雑誌等に表示されているスプリングレートはスプリング単体のレートに過ぎず、車両に取付けた状態での実効レートは単体でのレートと異なります。

例えばレガシィは初代BC/BFから2代目BD/BG型までは前後ともストラット式サスペンション、3代目のBE/BH型からリヤサスペンションにはマルチリンク式が採用されており、BE/BHの前後とBD/BGまでの前後を比較すると容易にサスペンション形式が異なることが推測できます。
ストラット式、マルチリンク式ではスプリングレートの計算が異なり(アーム長が異なる)、スプリング単体レートを車種ごとに比較をしても何の参考にもなりません。つまり、同じ10.0kg/mmのスプリングでも、ストラット式のサスペンションに付けると約9.5kg/mmとして機能し、ダブルウイッシュボーン式のサスペンションに付けると約5kg/mm程度になってしまい、スプリング単体で10.0kg/mmという数値では何の参考にもならないのです。

では正確にそのクルマのスプリングレートを知るには、ホイールレート(レバー比から算出され、ホイールレートはレバー比の2乗)という考え方を使い、ストラット式はホイールレートは概ね0.9~0.95。10.0kg/mmのスプリングでは9.0~9.5kg/mmが実効レートになり、レガシィの場合マルチリンク式Rrのホイールレートは0.68。ということは10.0kg/mmのスプリングを使用するとホイールレートは0.68×0.68 =0.46となり、10×0.46=4.6kg/mmということになり、これらはBE/BH型やBL/BP型のノーマルのスプリングレートが示す通り、 BD/BG型の時代に比べてBE/BH、BL/BP型のリヤがフロントより硬くなっているわけではない事を物語っているのです。

<ノーマルのスプリングレート> 
BH5 GT-B
バネ定数 F=2.9kg/mm、R=4.9kg/mm
BP5 GTspecB
バネ定数 F=3.6kg/mm, R 5.5kg/mm

自動車を含む乗り物のスプリングは、一般的にバネ上共振周波数を考えながら設計されなければなりません。つまり車体が突起を乗り越えたときの振幅の速さを考えながら決めるのが原則ということです。
乗り心地重視なら振動幅を"大きく・遅く"、スポーツ系なら振幅を"小さく・早く"することで目的とする"感触"を得られるのです。また、前後のスプリングのレートの配分は、クルマの前後の荷重配分に対応させるのが基本ですが、それだけではピッチングが発生しやすく安定性や快適性が損なわれます。そのためピッチングを防ぐような組合わせにするなどのきめ細かいチューニングが行われ、実際には前後のスプリングのうち、リヤを計算値より少し高め、あるいは低めにするといった手法を取ります。

もちろんこうした組合わせを選んだ上で実際にテスト走行を行い、乗り心地やコーナリング特性、ステアフィールなどを細かいところチェックしながら修正していく作業が求められるのです。
結果的には、スバル車のような前後荷重配分が60:40のクルマの場合、前後ストラット式なら5.0kg/mm:4.0kg/mmといったレートに、BE/BH型以降なら5.0kg/mm:8.0kg/mmといったレートになるのが自然である。ところが、BE/BH型以降用のローダウンスプリングや車高調整式サスペンションで、前後のレートが摩訶不思議なことが実に多く、例えば車高調整式で F=10.0kg/mm、R=8.0kg/mmのような例が専門誌にもなんの疑いもなく紹介されているので注意して比較することが必要なのです。