Column

2008/03/22

最新ECUチューニング事情

最新のECUの中身は以前に比べるとかなり様変わりし、新世代の技術が使用されている。 
現在のクルマのECUは、エンジン制御ECU以外に、TCU、ABS/ESP、エアコン、メーター、イモビライザーや照明などの統合ユニット、エアバッグ、パワステ、ドアロック、パワーウインドウ・・・など多岐にわたり、多数のECUが組み合わされているため、CAN-bus(1Mbps)通信を使用した車内LANが構築されている。

エンジン制御ECUに限っていえば、ROM/RAM/CPU、一体型の32bitCPU(RISCマイコン)となり、CPUは旧来ワンタイム型が使用されていたが、現在はフラッシュ・タイプが広く普及している。
フラッシュタイプのECUは、後からのROMの書換えが可能であり、プログラムの改修が容易にできることが利点であるが、もちろんフラッシュタイプとはいえ書換え回数に限界があり、その回数はおよそ100回程度とされている。

書換えにはECUのメモリーは診断ポートに専用機を接続することで、内部メモリーの読み書きも簡単にできるようになっているわけで、車両側診断ポートに接続する電子診断機は、以前は専用機器に車両データが書き込まれたカセットを差し込んで使用するタイプであったが、その後は車両データを書き込んだフラッシュメモリー式になり、現在ではノート型パソコンにに車両データを収録し、PCディスプレー画面をみながら操作できるようになっている。
診断断ポートにはブルートゥース発信機を挿入し、無線通信でPCとデータをやり取りすることもできるようになっている。このような診断システムのため、走行中の異常記録などは電子診断機を使用すれば簡単に読み出すことができ、プログラムや制御データの変更も簡単に実行することができる。 
したがって、プログラムやROMデータの更新も以前のように販売店のサービスキャンペーンでECUを交換するといった作業は必要なくなり、診断ポートを経由してデータを上書できる様になっている。 このようなシステムはスバルだけでなく他のメーカーでも普及している。

スバル車の場合ECUは、デンソー製で、エンジン制御プログラムは総合トルク制御方式を採用、総合トルク制御方式のシステム・ロジックは現代では最新のタイプである。 
総合トルク制御とは、走行状態での必要(要求)トルクのマップを作り、走行中の場面場面での必要トルクを決め、その必要(要求)トルクに見合った、電子スロットルの開度特性、点火時期、燃料噴射、過給圧を決めるというもので、以前のようにマップの面数を多くして対応する方式よりはるかに合理的になっている。

また最近のスバル車は、SIドライブという出力特性の選択方式を採用しているが、これもスイッチを切り替えると要求トルクが変更され、ドライバーの要求を簡単に実現できている。このような総合トルク制御方式のECUチューニングにおいては、かなり発想を転換する必要がある。 
走行中に決定される要求トルクのマップを変更すると運転フィーリングは変更することができるが、エンジンのパワーがアップするわけではない。(設定最大トルク以上には出力を得られないからである)

したがってこれらは本来の意味でのチューニングとは言えず、しかしながら、これをECUチューニングと称しているケースも少なくないのが現状である。ECUチューニングによって絶対的なパワーアップを実現するためには、点火時期、過給圧などの基本データをチューニングすることが必須で、そのためには、エンジンのノッキング限界や耐熱強度、過給圧の限界などエンジン本体の物理的な要素を研究し、これをベースに最高過給圧や点火時期を決める必要がある。このようなエンジン出力を底上げした上で、走行中の要求トルクマップを最適化するのが本当の意味のECUチューニングなのである。